富裕層の気持ち

 約10年前、私は独立しました。売上高ゼロ、資金1000万円でのスタートでしたから当初資金には困っていませんでしたが、なにせ売上高がゼロなので毎日毎日資金が減少し続け、売上高の獲得は急務でした。そんなとき、ある方の紹介で、急激に会場を増やしている異業種交流会に参加するようになりました。それから1年後には現在の土台を作ることができましたのでこの異業種交流会には(現在は参加していませんが)非常に感謝しています。

 世にはいろいろな異業種交流会があるようですが、私の参加した会は私も含めて商売ができていない方々が多く、売り手ばかりが集まっていました。また、傷の舐め合いではありませんが、飲み会が非常に多く、情報交換なのか愚痴なのか、毎回同じような話題で盛り上がっていました。

 今でも鮮明に覚えている内容の1つに「これからは富裕層相手の商売をしなければならない!」というものがありました。売り手がいくら良いものを持っていても、買い手に資金がなければ買ってもらえないので、富裕層をターゲットとするという内容でした。

 今考えればとんでもなく無茶苦茶なことを言っていると思うのですが、当時は私も「客単価を上げるためにはどうすればいいか」などといつも考えていましたから、富裕層を相手にするのは当然だよねとむしろ肯定的に受け止めたものです。

 問題は、「富裕層相手の商売を」と言っていた方々がその後どうなったのか、です。

 その異業種交流会に参加しなくなった方が多かったように記憶しています。富裕層を顧客にできた方は全くいなかったと思います。

 それは何故なのでしょうか?

 考えてみれば簡単な話です。富裕層ではない人は富裕層の気持ちが分からないばかりか、富裕層と出会うきっかけさえ掴むことができない、という現実があったのでしょう。当時の私の記憶では、その方々の考える富裕層の定義は「年収1000万円。保有資産1億円」でした。

 富裕層の定義が「自分から見たら」というレベルだったので、成果が出せないのは悲しい必然だったのです。