財布の中身から見えるもの

 財務コンサルの仕事をしていると、良くも悪くも人様の“財布の中身”に興味を持ちます。具体的に言うと、個人の財布のお金であったり、会社の現預金残高であったり、です。

 私は最近スマートフォンでの支払いが圧倒的に増えたため、現金やクレジットカードでの支払いが激減しています。1日に1円も現金を使わない日もあるほどです。しかし現金を持っていないと支払いができない場面があるので、以前とだいたい同じ金額の現金をいつも財布に入れています。

 私の場合10万円前後の現金をいつも持っています。面白いことに、12万円を持つことはあっても、15万円を持とうと思うことはなく、8万円を切ると何故か不安になってきます。これは私が使える金額を表しているのだなとある時ふと気づきました。「12万円-10万円」と「12万円-8万円」のあいだ、つまり2万円から4万円の買い物が私の許容範囲だということです。

 この話をお客様にしたところ、その社長も財布の中身はいつも10万円前後で、5万円を切ると不安になるとおっしゃっていました。ということは「10万円-5万円」で、この社長の買い物の許容範囲は最大5万円ということです。

 この考え方は会社の現預金残高にも当てはまります。貸借対照表は中小零細企業にあっては社長の性格と言われていますので、資金の調達の仕方や運用の仕方、現預金の残高はそれぞれの会社の社長の性格が表れているのです。

 同じ事業規模でも、5000万円の現預金残高がないと不安な社長もいれば、3000万円でも大丈夫という社長もいます。しかしその社長が2000万円を切ると不安になるとすれば、許容範囲が具体的に分かります。

 社長もそれぞれ性格は異なります。私の仕事は、性格が違う社長の会社経営のお手伝いです。ある程度の基準や目安は大切ですが、それを押し付けず、社長の性格を最大限活かせる経営のお手伝いを目指しています。