客単価という妄想

 仕事柄飲食店や小売店の経営者に客単価をお聞きすることがあります。「2,500円です」とか「4,000円です」とか、大半の経営者はただちにお答えくださいます。

 お聞きしておいてこんなことを言うのも何ですが、この客単価は本当に正しいのかと最近私は疑問の目で見ています。例えば、2,500円という客単価はそのお店のお客様が決めていることではなく、店側が勝手に作っている数字ではないかということです。

 私は居酒屋が好きでよく行きます。必ずと言っていいほど「おすすめ」のメニューが用意されています。店が「おすすめ」と言うくらいですから、どれほど特徴があり、おいしいのか、興味が湧きます。そこで店員さんに聞いてみるのですが、ほとんどすべてのお店で「食べたことも飲んだこともありません」という返事が返ってきます。

 では何故「おすすめ」なのでしょうか? 「ただ何となく」や「材料が余ったから」、「原価が低いから」、「作っている人間がおいしいと勝手に思っているだけ」など、理由は多々あると思いますが、「すすめられている側」には何も伝わりません。

 もし私がオーナーや店長なら、定番やおすすめはスタッフ全員に食べさせ、それぞれのスタッフの好みや感想を聞き出し、それをメニューの横に記し、スタッフに語らせ、お客様にイメージしていただきます。

 買う側には買う理由が必要ですから、その理由を店側が作ってあげれば良いのです。お客様全員がそれを買う保証はありませんが、600円の商品を4人がけテーブルに1つ買っていただければ、それだけで客単価は150円上昇します。

 今までと同じことを今までと同じようにやっていては、客単価は上昇しないどころかかえって飽きられてしまい、店全体の売上が下がってしまうことになりかねません。

 自分自身が「どのようにすすめられたら買ってしまうのか?」を考え、お客様に実践することによって今までの客単価は妄想であったことを実感すべきです。